では、生前贈与をした場合に税負担はどのくらい減らすことが出来るのでしょうか?
これは、「生前贈与をしたことにより生じる贈与税額」と「生前贈与したことにより減少する相続税額」を比較することにより分かります。
ここでは上記の(事例1)を前提に、いくつかの生前贈与のケースについて見ていきたいと思います。
(1)100万円を生前贈与した場合
贈与財産が110万円までは贈与税は課税されないので贈与税額は0円です。
一方、「相続が課税される財産」はもともと2億円でしたが、100万円の贈与をしたので「相続が課税される財産」は1億9,900万円となります。
では相続税はいくら減少するのかということですが、ここで重要な点があります。それは、
生前贈与をすると、もともと相続税が課税されるはずだった金額のうち、最も高い税率の部分が減るということです。
(事例1)では、最も高い税率が適用されていた40%の部分の金額が減るということになります。
結果、将来の相続税額は 100万円×40%=40万円 減少して6,260万円となります。
贈与税は0円ですから、100万円の生前贈与により相続税の負担を40万円減少させることができたと言えます。
☆別の言い方をすると・・・
100万円贈与をした場合の贈与税負担率(贈与税額÷贈与によりもらった財産の額)は0円÷100万円=0% です。
つまり、贈与税負担率が0%の100万円の贈与をしたことにより、将来40%の相続税がかけられる財産が100万円減少したと言えます。
(2)500万円の生前贈与をした場合
500万円の生前贈与をした場合、贈与税額は 485,000円 です。
将来の相続税額は 500万円×40%=200万円 減少して6,100万円となります。
つまり、500万円の生前贈与により、税負担を200万円ー485,000円=1,515,000円減らすことができたと言えます。
☆別の言い方をすると・・・500万円贈与した場合の贈与税負担率は485,000円÷500万円=9.7% です。
つまり、贈与税負担率が9.7%の500万円の贈与をしたことにより、将来40%の相続税がかけられる財産が500万円減少したといえます。
(3)1,000万円の生前贈与をした場合贈与税額は 177万円 となります。
将来の相続税額は 1,000万円×40%=400万円 減少して5,900万円となります。
つまり、1,000万円の生前贈与により税負担を400万円ー177万円=223万円減少させることができたといえます。
☆別の言い方をすると・・・1,000万円贈与した場合の贈与税負担率は177万円÷1,000万円=17.7% です。
つまり、贈与税負担率が17.7%の1,000万円の贈与をしたことにより、将来40%の相続税がかけられる財産が1,000万円減少したといえます。
3つのパターンを見ていただきましたが、いかがでしょうか?
生前贈与したことにより減少することとなる将来の相続財産は最も高い税率の部分が減るため、贈与税が非課税である110万円を超える金額を贈与したほうが有利な場合があるということを分かっていただけたと思います。
ポイントは贈与税負担率と相続税の最も高い適用税率を比較することです。
将来相続税の支払いが予想される人は、贈与税の非課税110万円にとらわれないで贈与をすることを是非検討してください。
(参考)贈与税負担率