生活費や教育費の援助でも相続税対策ができます
「
生前贈与で効果的な相続対策を!その仕組みを解説します」や「
贈与税を払って生前贈与をした方がお得な場合があります」を見ていただいた方は生前贈与が相続税の節税対策として有効であることを理解していただいたと思います。
実際に生前贈与を始めようと考えている方もいるかもしれません。
しかしもっと簡単に相続税が課税される財産を減らすことができます。
それは生活費や教育費の援助をすることです。
「えっ、そんなことで」と思われる方もいるかもしれませんが、実は一番お手軽な相続税対策といえます。
ただし注意しなければ逆に税負担が増えてしまうことも・・・
ここではどのようになことに注意すれば贈与税が課税されずに生活費や教育費を援助することができるかということについて見ていきたいと思います。
扶養義務者とは?
では国税庁のHPでいう扶養義務者とはどのような人をいうのでしょうか?
国税庁のQ&Aで次のような人が該当するとしています。
① 配偶者
② 直系血族及び兄弟姉妹
③ 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
④ 三親等内の親族で生計を一にする者
おおまかに言うと、
①「配偶者」
②祖父母、両親、子、孫
③同居しているおじ・おば、おい・めい
などから生活費や教育費をもらったとしても贈与税はかからないこととなります。
結果、一般的には両親が負担する孫の生活費や教育費を祖父母が負担することにより、祖父母が死亡したときに相続税が課税される財産を減らすことができます。
非課税となる生活費・教育費とは?
扶養義務者からの生活費や教育費の贈与はどのようなものでも贈与税が非課税となるのでしょうか?
国税庁のQ&Aでは次のように記載されています(一部省略)。
○「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用をいいます。また、治療費や養育費その他これらに準ずるものを含みます。
○「教育費」とは、被扶養者(子や孫)の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限られません。
「生活費」「教育費」どちらについても「通常必要なもの」は贈与税が非課税となるとされています。
では「通常必要なもの」とはどのようなものなのでしょうか?
この点について国税庁のQ&Aでは次のように記載されています。
贈与税の課税対象とならない生活費又は教育費に充てるために贈与を受けた財産のうち「通常必要と認められるもの」とは、贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいいます。
かなりかみ砕いて言うと一般的な常識の範囲内の生活費や教育費の贈与であれば贈与税は非課税ということになります。
ただし受贈者(贈与を受ける人=被扶養者)が高収入または資産家ということであれば当然贈与の必要性は低く、多額の生活費や教育費の贈与は一般的な常識の範囲内とは認められない可能性があるので注意が必要です。
非課税となる生活費・教育費の具体例
では非課税となる生活費・教育費には具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
国税庁のQ&Aなどでは次のようなものが例示されています。
(贈与税が非課税となる生活費の具体例)
・生活費(家賃、食費、日用品・家電購入費など)の仕送り
・医療費
・結婚式や披露宴の費用
・婚姻時の家具や家電あるいはこれらの購入資金
・出産時の検査・検診代、分娩・入院費
(贈与税が非課税となる教育費の具体例)
・学資・教材費・文具費
・通学費
・修学旅行費
・学習塾の授業料
・受験料
・留学費用
これらの費用は特に意識しなくても今まで贈与税を納めていなかったと思います。親や祖父母に大学に行ったときの授業料や生活費の仕送りをしてもらって贈与税を支払わなければならないということであれば限られた人しか教育を受けることができず、社会のためにならないですよね。
もちろん、これらの費用に該当すればすべて贈与税が非課税となるのではなく、
一般的な常識の範囲内でなければ贈与税が課税されてしまうので注意が必要です。
生活費や教育費の一括前渡しはあり?
生活費や教育費は一般的な常識の範囲内であれば贈与税は非課税ということであれば、次のように考える人がいると思います。
これから10年分の生活費や教育費をまとめて贈与しよう!
(自分もあと何年生きるか分からないし、まとめて贈与すれば相続税が課税される財産を一気に減らすことができるし・・・)
しかしその贈与は待ってください!
その贈与には贈与税が課税されます!!
国税庁はこのような贈与で相続税の負担を減らすことを認めていません。
次のような国税庁のQ&Aがあります。
[Q1-3] 数年間分の「生活費」又は「教育費」を一括して贈与を受けた場合、贈与税の課税対象となりますか。
[A] 贈与税の課税対象とならない生活費又は教育費は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与を受けた財産であり、したがって、数年間分の生活費又は教育費を一括して贈与を受けた場合において、その財産が生活費又は教育費に充てられずに預貯金となっている場合、株式や家屋の購入費用に充てられた場合等のように、その生活費又は教育費に充てられなかった部分については、贈与税の課税対象となります。
・・・・・10年分一括して贈与した場合、生活費や教育費にあてられなかった部分については贈与税が課税されてしまうということになります。
生活費や教育費について贈与税が課税されないようにするには
必要な都度贈与され、直接生活費や教育費に充てる必要があるということに注意が必要です。
生活費や教育費として使われたことを明確にして渡す!
必要な都度生活費や教育費として贈与したつもりでも普段から利用している預金口座に振り込むと、振り込んだお金が生活費や教育費として使われたのかあるいは家や株の購入費用として使われたのかわからなくなる可能性があります。
後で税務調査が入った場合に、もらった金額が生活や教育費として使われているということ明確に説明できるようにするために次のような方法で生活費や教育費の贈与をすることがおすすめです。
○学校の入学金や塾の授業料を支払う場合に直接大学や塾の口座に振込む
○贈与専用口座を開設して、その口座に生活費や教育費が必要な都度振り込んでもらい、その口座からの支払いについては生活費や教育費としてどのような支払いをしたのかを領収書を保管するなどして明確にする(少し面倒ですが)。
これらの方法により生活費や教育費として贈与されたことを明確にして、後ろめたい気持ちなく節税を図ることができます。
おすすめの方法なのでぜひご検討ください!
贈与税の特例でもっとお得に!
長い時間をかけて、110万円の贈与税の非課税枠や生活費・教育費の贈与税の非課税を利用して贈与をすれば、多くの人の相続税についてはそれほど問題にならない金額になると思います。
ただ財産が多い人については次のような贈与税の特例を利用すればより合法的に相続税が課税される財産を減らすことができるので是非ご検討ください。
○住宅取得等資金贈与の非課税
子や孫が住宅を購入・新築する資金を一定額、贈与税が課税されることなく贈与することが出来る制度です。
○教育資金の一括贈与の非課税
子や孫の教育資金を1500万円まで贈与税が課税されることなく贈与することが出来る制度です。
本来教育資金の贈与については贈与税は非課税なのですが、贈与者(あげる人)が高齢の場合には一度に1500万円の贈与をすることができるのは非常に有効な相続対策となります。
詳しくはこちらの国税庁のHPをご参照ください。
→
祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
まとめ
生活費や教育費の贈与について説明しましたがいかがでしょうか?
贈与税が非課税で相続財産を減らすことができるということばかり説明しましたが、実は生活費や教育費の贈与はもらう人が
必要としているときに 必要な財産を
渡すということです。
相続で財産を渡してももらった人の喜ぶ顔を見ることはできませんが、生きている間に渡せば喜ぶ顔を見ることができ、もらった人は贈与してくれた人に感謝の気持ちを伝えることができます。
その意味ではタイムリーで幸せな気持ちになれる相続対策といえるかもしれません。
相続対策を検討している方は是非「生活費・教育費の贈与」を検討してください。
お断り
提供する情報は一般的なもので、いかなる個別の事案に対しても適用されることを保証したり、解決案を提供するものではありません。個別の事案については、専門家の意見を確認したうえで、ご判断下さい。