住居の敷地となっている土地であれば無条件で特定居住用宅地等に該当するわけではありません。
特定居住用宅地等に該当するケースとして次の3つがあります。
(ケース1)被相続人と同居していた親族がその住居の敷地を取得する場合
被相続人が住んでいた住居の敷地を被相続人と同居していた親族(上記の例では息子)が取得した場合には、その親族が取得した住居の敷地は特定居住用宅地等に該当します(評価額の20%に対して相続税が課税されます)。
ただし、住居の敷地を取得した親族が次のどちらかの要件を満たさなかった場合には住居の敷地は特定居住用宅地等に該当しないこととなります。
(1)被相続人と同居していた住居に相続税の申告期限まで居住し続ける
(2)相続税の申告期限まで住居の敷地を所有し続ける
(1)と(2)のいずれかの要件を満たさなかった場合には、特定居住用宅地等に該当しないこととなり、80%の評価額の減額は適用されず土地の評価額そのものに対して相続税が課税されます。
(ケース2)被相続人が居住していた住居の敷地を配偶者が相続する場合
被相続人が居住していた住居を配偶者が取得した場合には、その配偶者が取得した住居の敷地は特定居住用宅地等に該当します(評価額の20%に対して相続税が課税されます)。
そして配偶者が被相続人が居住していた住居の敷地を取得する場合については
「無条件で」特定居住用宅地等に該当することとなります。
つまり、(ケース1)のように被相続人が居住していた住居に申告期限まで居住し続けていない場合でも、相続税の申告期限まで住居の敷地を所有していない場合でも(敷地を売却している場合であっても)、配偶者が相続したその敷地は特定居住用宅地等に該当することとなります。
さらに配偶者が被相続人と同居していなかった場合であっても、配偶者が取得した被相続人が居住していた住居の敷地は特定居住用宅地等に該当します。
(ケース3)被相続人が居住していた住居の敷地を被相続人と別居していた親族が取得する場合
このケースは非常に複雑です。
「被相続人」と「住居の敷地を取得する親族」とに分けて特定居住用宅地等に該当するための要件を確認していきたいと思います。
(1)被相続人の要件
①配偶者がいない
②同居していた相続人がいない
(2)住居の敷地を取得する親族の要件
①3年以内に、本人・その配偶者・3親等以内の親族が所有する住居(被相続人が死亡時に居住していた住居を除く)に居住したことがない
②被相続人が亡くなった時に親族本人が居住している住居を過去に所有していたことがない
非常に分かりにくいと思いますが、具体的には被相続人は配偶者が先に亡くなっていて一人暮らしをしていて、子どもは賃貸住宅に住んでいるような場合です。
このケースでは住居の敷地を取得する親族が住居を所有していないことが要件となっていることから税理士業界では「家なき子の特例」と呼ばれています。
今回の記事では特定居住用宅地等に該当する3つのケースの基礎的な要件を説明しましたが、実際にはこのほかにも様々な要件があります。
また特定居住用宅地等に該当するほかのケースというものもあるので慎重に確認することが必要な制度です。